2014年5月18日

ゾーンをつくれ!

刺繍2

14歳で初めて新聞配達のアルバイトを経験してから、とにかく働くのが大好きになった。中3でガソリンスタンド、高2でラーメン屋、10代後半はバーのキッチン……。どこもけっこう肉体労働系の職場だったので、最年少の私は怒られることばかりだったけれど、今思えば、あの頃教えていただいたことが「働く」基本をつくってくれた気がする。

35年ほど前の当時、「セルフ」のスタンドなど皆無だったので、免許をもっていない私はひたすら車のフロントガラスを拭いたり、車中にゴミがないかを確認したり、エンジンオイルの汚れをチェックしたりと、やれることは限られていた。だから言われたのが、

「お前はお客様が来たら皆さんが何を望んでいるのかを感じて動け。そして社員が働きやすいように気を利かせろ」

ただ、それだけ。つけられたあだ名は「兵隊」。時給は幾らだったかな。とにかく「へいたーいっ!こっちに来い」「へいたい、これをやっておけ!」こう書いて思い出しながら笑ってしまったが、めちゃめちゃ厳しかったよね。

高校2年生の秋から始めたラーメン屋のアルバイトも、罵声のような指示出しはガソリンスタンドより軽減されたものの、オープンキッチンだったこともあって、状況判断に関しては厳しく叩き込まれた。

「いいか。お客様が何を求めているのか、ぼうっとしないでいつも考えるんだぞ。できることを探せ。探したら自主的にやるように」

「いいか。料理をしながら調理場はいつも整えろ。調理して片付け、調理して片付けのくり返し。常に動ける“場”をつくれ」

そして20代は「転職大魔王」、30代は遅ればせながら「まさか」の出版社へ。慣れないことの連続だった。

しかし、肉体を動かしながら同時に考えるクセが若い頃から身についていたので、適応能力は高かったように思う。

「ゾーンをつくること」

どんな環境の職場だろうが、どんな内容の仕事だろうが、最初から徹底的に、過剰なくらい情報のインプットやイメージを膨らませることに心がけ、自分に負荷をかけることで心の中に「ゾーン」をつくった。「心の遊び場」と言い換えてもいいかもしれない。3年間かかって覚えることを、まるで半年間で覚えるような感じ。徹底的に。がむしゃらに。

ゾーンができれば、そこは心が平穏を保つ「場」にもなる。かりに突発的なアクシデントが起きたとしても、ゾーンで呼吸を整え、次の一手を考える場所になるのだ。飛行場でたとえるなら1本しかなかった滑走路が2本、3本、4本と増えることにも似ている気がする。私だけにしかわかりにくい感覚かもしれないが、一度に複数のことを手がけるときにも、ゾーンの有無は大きく関係しているのである。

今、私の毎日は、公私ともに時間的な余裕が極めて少ない。もうね、「助けてくれよ」と思うことだって1つや2つじゃないから。しかし確実に「ゾーン」は広がっている。

静かな場所は、心の中で広がりつづけている。